研究概要 |
今年度は,前年度の研究経過によって得られた結果をもとに,継続して大学附属の相談機関,児童相談所,児童養護施設等と連携し,心理臨床的援助が必要な児童・生徒とした臨床実践・臨床研究を行った。臨床実践研究の一つとして,前年度に開発した"不快情動への態度尺度"を用い,児童・生徒のストレスマネジメント教育の効果との関連について検討した。ストレスマネジメント教育の手法としては,情動への態度と関連の深い身体感覚や情動体験を取り扱う臨床動作法を用いた。対象者を不快情動への態度尺度の2因子得点の結果によって4群に分類し,2因子とも得点が低く不快情動への態度が乏しい群では,動作法体験中に"弛緩感・爽快感","動作への気づき"などの自体感が低く,集団で実施する中ではリラクセイション体験を得ることが乏しかったと考えられた。また不快情動への"切りかえ可能性"が高く,"拒否感"が低い群では,動作法中の肯定的な体験や自体への気づきが多く記述され,特に有効であった可能性が示された。このように,"不快情動への態度"のあり方によって臨床動作法の導入にあたっての配慮を変えてゆく必要性が考えられた。また,児童養護施設に入所している小学校5年~中学校1年生の生徒5名を対象に,1年間週1回~月1回の頻度で個別的に臨床動作法と遊戯療法を併用した心理療法の実践を行った。個別での継続的な心理療法によって,行動や情動制御の改善を図ったものであるが,各対象者によって臨床動作法の受け入れや治療過程の差異が見られており,これらについて"不快情動への態度"という観点から考察を行った。以上の調査研究・実践研究より,思春期のストレスに関して情動発達の視点から新たな検討が行われ,今後の心理臨床実践に有意義な知見が得られたと考えられる。
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