研究概要 |
マイクロ流路の壁面帯電(ゼータ電位)によって電界中で発生する電気浸透流の流動構造を解明することを目的とした研究を遂行し,以下の成果を得た.壁面ゼータ電位を把握するために,申請者らによって提案されたナノ・レーザ誘起蛍光法(Kazoe and Sato 2007)を基に,二色の蛍光色素およびエバネッセント波を用いたゼータ電位の定量法を開発した.本手法によって,壁面に施された自己組織単分子膜(SAMs)のパターンを可視化し,ゼータ電位分布として定量的に評価することが可能となった.本手法は特許として出願され,研究成果は国際会議にて発表された.また,非一様ゼータ電位によって発生する電気浸透流の過渡状態の速度分布計測を行った.計測法として,低レイノルズ数流れの再現性に基づき,トレーサ蛍光粒子を用いた繰り返し速度計測法を開発した.本手法によって,粒子の凝集による流路の詰まりや流れの変化を防止する低粒子数密度下での高時空間分解能を有する速度計測が可能となった.上記のSAMsを用いた表面修飾によってゼータ電位分布を発生させた実験流路を用いて電気浸透流の速度計測を行い,電界印加後から定常状態に達するまでの時系列速度分布を得た.実験結果より,非一様ゼータ電位によって壁面近傍速度が発生し,運動量が流路全体に輸送されることで流動場が形成され,その時間スケールは運動量拡散に依存し10^<-2>s程度であることが判った.以上の研究成果は国内学会において発表された.その一方で,交流電場中における誘電泳動を用いた粒子分離技術の開発を行い,本技術は特許として出願され,研究成果は国内学会にて発表された.更に,生化学分析を目的としたマイクロ流体デバイスにおいて,流路の主な材質であるPDMSにコラーゲンを混入するこたでデバイスの保水性を制御する技術を開発し,研究成果が雑誌論文に掲載決定となった.
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