研究課題
鳥類血液原虫3種(Plasmodium gallinaceum,P.juxtanucleareおよびLeucocytozoon caulleryi)に関して、核外ゲノムであるミトコンドリアゲノムの全塩基配列とゲノム構造を決定し、これまで部分的な情報しか得られていなかったアピコプラストゲノムについても塩基配列を解析した。その結果、不足している鳥類血液原虫類のゲノム情報の充実が図られ、病原体の生物学的特徴の把握や、原虫検出手法の開発に応用が可能となった。また、両核外ゲノムの遺伝子の一部について、遺伝子発現をL.caulleryi血液ステージ虫体においてRT-PCRで確認することもできた。新たに解析したアピコプラストゲノム遺伝子の一部を標的として、実際に野外サンプルから鳥類血液原虫遺伝子の検出を行った。その結果、鳥類と蚊の検体の一部に増幅を認め、アピコプラストゲノム上の遺伝子であることが示唆された。よって、従来のミトコンドリア遺伝子の他、アピコプラスト遺伝子を標的とした検出法も、宿主種を問わずに可能であることが示唆された。鳥類の赤血球には核DNAがあるため、宿主のゲノムと原虫のゲノムが混在しているが、本研究成果はPCRによる検出に際しての特異性を検討するため応用可能であると考えられる。今後は、これらのゲノム解析に基づく原虫検出手法の開発を目標に、原虫特異的配列を増幅するプライマーセットの設計・PCR系の改良・検出限界の検討などに取り組む予定である。本年度の成果により、いまだ十分に把握されていない我が国における鳥類血液原虫の分布状況や原虫保有鳥種やベクターとなる節足動物種が不明なままの感染サイクル解明に寄与する原虫検出手法の開発と実証を目指しか、野外サンプルにおける解析手法の検証を行うことが可能となると思われる。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Parasitology Research 104(2)
ページ: 251-255
Parasitology Research 103(4)
ページ: 953-957
Journal of Veterinary Medical Sciences 70(11)
ページ: 1205-1210