研究課題
鳥類血液原虫(Leucocytozoon caulleryi)に関して、核外ゲノムであるアピコプラストゲノムの全塩基配列解明を目的とし、ゲノム解析を進めてきた。解析を行う上で、鳥類の赤血球に存在する核DNAによる宿主ゲノムと原虫ゲノムの混在が遺伝子発現解析等へ影響することから、近年ヒトマラリア原虫の診断法の一つとして有力視されているフローサイトメトリー法を利用した鳥類血液原虫の分取を試みた。その結果、L.caulleryiのガメトサイトステージ原虫感染血液において、宿主血液細胞と明確に異なる分画が認められた。また、ソーティングにより特異的分画を分取して内容を観察したところ、一部に宿主血液細胞の混在が認められたものの、ガメトサイト期原虫が約85%を占めていた。本研究成果はPCRによる検出に際しての鳥ゲノムによる非特異反応を削減するのみならず、原虫感染の診断やステージ特異的な遺伝子発現解析を検討する際に、感染血液中からの高純度の原虫ゲノム回収に対して応用が可能であると考えられる。今後は、アピコプラストゲノムならびにミトコンドリアゲノム解析結果に基づく新たな原虫検出手法の開発やステージ別原虫特異的な遺伝子発現解析、また本年度行ったフローサイトメトリー法の改良によるガメトサイト期以外の血液ステージ原虫の検出・分取を目的とした研究に取り組む予定である。本年度の研究成果により、新たな原虫検出系の開発や比較的採取が容易である血液検体からの純粋な原虫ゲノム抽出の可能性、そしてそれを応用した血液原虫のステージ特異的な遺伝子発現解析などの研究が可能になることが期待される。
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