研究課題
私は、自己免疫疾患の発症や悪化に関与することが知られている腫瘍壊死因子(TNF)に着目し、安全かつ有効な治療薬の開発を目指し研究を進めてきた。前年度までに、私は2種類存在するTNFのレセプターTNFR1およびTNFR2のうち、主に炎症反応の惹起に関わるTNFR1の作用を選択的に阻害できるTNFR1指向性アンタゴニストを開発し、TNF関連疾患に対する有効性を示してきた。そこで本年度は、こうした蛋白質性の医薬品候補を、より有効性と安全性に優れた医薬品として分子設計しようと考え、まず創薬基盤技術の開発を試みた。TNFは、先述のように2種類のレセプターを介して、宿主免疫応答を司ることが知られている。そのため、これまでの抗TNF療法では、両TNFレセプターを介した機能を全て遮断してしまうが故に、免疫力の低下を招いてしまい、易感染性や易発がん性といった副作用を招くことも報告されている。従って、TNFR1に対する選択性の向上、即ち蛋白医薬への優れた選択性の付与は、治療薬としての薬効の増強や投与量の低減だけではなく、副作用のリスクをも低下させることにつながる。そこでまず、私はこれまでに独自に開発してきたファージ表面提示法によるアミノ酸改変技術の更なる効率化をはかるために、遺伝子シャッフリング法を取り入れた機能性人工蛋白質創出技術を開発した【Biochem.Biophys.Res.Commun,2009.】。さらにその技術を適応して、更なるレセプター選択性に優れたTNFR1指向性アンタゴニストの開発を試みた。その結果、TNFR1に対する結合選択性および作用選択性に優れた新規アンタゴニストの創出に成功した【Pharmazie,2010.】。このように、私は独自に開発した創薬技術を駆使して、自己免疫疾患治療薬としての医薬価値に優れた医薬品候補を創出することに成功した。
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