研究課題
本研究の目的は、騎馬遊牧民として最古の文献史料を残した突厥可汗国(紀元後六世紀中葉から八世紀中葉)について、研究を推進することである。そのため、モンゴル高原に現存する第一次史料「突厥碑文」を文献学的に読解するとともに、碑文が所在する周辺地域や考古遺跡の調査も継続している。本年度は、夏期から秋期を中心にモンゴル国内の考古遺跡の実見調査を行った。これまで存在が報告されてきた突厥碑文のテキストを網羅的に把握するために、突厥時代のホショー=ツァイダム遺跡、イフ=ホショートゥ遺跡、ウイグル時代のシネウス遺跡、タリアト碑文、テス碑文などを精査した。突厥文字碑文の網羅的なテキストデータベースの作成を目的としてきたが、そのための基礎となる情報を多く収集することができた。なお、突厥文字銘文については毎年新発見のものが報告されており、本年度の調査でも新たな文字銘文を発見することができ、それをモンゴル国の学術誌に掲載することができた。今後もモンゴル国でのフィールドワークが必要であることを銘記しておく。また夏期には、中国の内蒙古自治区で野外調査を行った。現在の中蒙国境地帯は、前近代の古代トルコ民族・モンゴル民族といった遊牧民の活動の舞台であったためである。達茂旗の百霊廟を中心とした草原で調査を実施し、青銅器時代から突厥時代に由来する遺跡の同定作業をおこなった。調査中、ここでも新たな突厥文字銘文の存在を知ることになったが、以上の遊牧民関係の遺跡についてはいずれも学術報告が適正に行われているとは言い難く、遺跡や遺物の状況を正確に把握すべく、現地調査を継続してゆきたい。モンゴルでの在外研究から帰国後、各種拓本を比較して、トニュクク碑文の最新版テキストと訳注を作成した。加えて、モンゴル高原と中国華北地域の歴史的情勢を把握すべく論文を執筆、投稿しており、現在は審査段階にある。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Архелогийн судлал [Studia Archaeologica Instituti Archaeologici Academine Scientiarum Mongolicae]
巻: Tom.30 No.10 ページ: 51-56
遼金西夏研究の現在
巻: 3 ページ: 1-30