研究課題
本年度はまず、香港の宣教師の影響下で育成されてきた中国人知識人について調査・研究をすすめた。バーゼル伝道会史料の現地調査などにより、洪仁〓についてあらたな史料を発掘することができたほか、香港で育成され、香港社会や清末の洋務運動で活躍した知識人たちの動向を、大陸中国の社会変動との関係性の中でより明確に分析することができた。さらに同じように上海の知識人についても資料の発掘と分析を行い、墨海書館から発行された科学書の翻訳書や月刊紙『六合叢談』を手がかりに墨海書館に集った知識人たちのネットワークをさらに明らかにするとともに、曽国藩や李鴻章ら洋務官僚の幕僚として活躍した人物についてもその経歴を解明することを試みた。また、The North China Herald紙やThe China Mail紙、また宣教師の筆記などを丹念に読み込み、太平天国に関する欧米側の見方を明らかにすることを試みた。太平天国とキリスト教との関係や、キリスト教の伝道者としての経験を積んだ洪仁〓の太平天国合流という事件が、欧米人の間で一時、過剰なまでの期待を生みながらも、1860年から1862年初めにかけての欧米と太平天国との直接的な交流の中で、これらの期待が裏切られ、逆に太平天国や洪仁〓に対する否定的な見方が多数を占めていった過程について分析をすすめた。特に宣教師の筆記については、これまであまり注目されてこなかった史料も香港において収集し、宣教師の描いた洪仁〓像の再構築に取り組んだ。その他、研究協力者として参加した平成21年度科学研究費補助金(研究種目名基盤研究B)「植民地期東アジア民衆諸宗教の伝播と交流~情報メディアの分析」の調査報告として、近現代香港における青蓮教系民衆宗教の発展の過程について分析を行い、その特徴と役割を明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
武内房司編『越境する近代東アジアの民衆宗教』、明石書店 (掲載確定,現在再校中)
Ha, Louis ed., History of Catholic Religious Orders and Missionar Congregations in Hong Kong, Vol.1, Centre of Catholic Studies, HKCU
ページ: 274,303