研究概要 |
本研究は,蛍光体の理論設計手法を確立すること最大の目的とし,このために3年間で「蛍光体の結晶構造・電子状態・発光特性との関連性確立」を目標としたものである.本年度は「Eu^<2+>付活蛍光体の構造と電子状態の関連性の明確化」を目的として研究を進めてきた.具体的には,次の事項について研究を進めた. 1)格子欠陥・構造の乱れを有するBaMgAl_<10>O_<17>:Eu^<2+>(BAM:Eu^<2+>)蛍光体の構造予測 -現実の状態を考慮するためには,格子欠陥や構造の乱れを有するモデルをベースに検討することが必要である.現在は,これらで予測した構造のBAM:Eu^<2+>の電子状態を進めている段階である. 2)BAM:Eu^<2+>以外のEu^<2+>付活蛍光体の電子状態計算 -計画を前倒しし,BAM:Eu^<2+>以外のEu^<2+>付活蛍光体としてSrS:Eu^<2+>およびCaS:Eu^<2+>の電子状態計算行い,すでに学会で発表した.この他,窒化物蛍光体についても電子状態計算を進めている. 3)電子状態ベースで励起エネルギー移動経路を予測する手法の開発とその応用 -本来は研究計画に含んでおらず,まだ予備的な段階のものであるが,発光効率予測・濃度消光の知見を得ることを目的として手法の開発を行った.すでにいくつかの蛍光体にこの方法を適用した. また,研究計画に含んでいた複数希士類原子の高速計算に向けた希土類材料高速計算法の理論拡張は進行が遅れた.現在,準備段階にあり,次年度にはここを進めていく予定である.一方で,3)の励起エネルギー移動経路の予測手法の開発をすすめた.本手法を発展させ,異なるEu濃度の蛍光体モデルを用いてシミュレーションを行うことで,濃度消光制御に関連する知見が得られると考える.加えて,次年度計画の前倒しであるが、既存蛍光体の改変による発光波長制御について予備的な結果を得ている.
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