研究課題
火星や氷衛星に見られる流動地形の形成過程やテクトニクス・熱進化過程を知るためには、氷・シリカ混合物のレオロジーを知ることが非常に重要となる。そこで本年度は、レオロジーの中でも特に流動則(ε=A・σ^n:εは歪速度、sは応力、Aとnは定数)に着目し、それを求めるための変形実験を行った。先行研究から、シリカ含有率が同じ試料でも結果のばらつきが大きく流動則の決定精度が悪いという問題があった。この原因を圧密試料の残存空隙率のばらつきであると予測し圧密実験により、圧密条件と残存空隙率の関係を調べた。この実験から圧力を10MPaから30MPaと変化させると、空隙率が約5%減少することが分かった。そこで残存空隙率に着目し、氷・シリカ混合物の流動則に対する残存空隙率依存性を変形実験から求めた。その結果、各空隙率で結果を整理することができ、さらに同じシリカ含有率でも空隙率の増加と共に強度が減少することが分かった。さらに本年度は実際の氷衛星表面の環境を再現して、低温度・低歪速度下での実験を試みた。今までは-25℃以上で実験を行っていたがさらに低温度にするために、試料部分とピストン部分のみをドライアイスで冷やして実験を試みた。そして温度が-50℃から-70℃の範囲内での実験に成功した。また、1回の実験で連続的な応力と歪速度の関係を得ることが出来る流動則を効率的に求めるための新しい方法として圧子圧入試験法の開発を行った。この方法を用いて実験を行った結果、約1日の実験で歪速度が約10^<-3>s^<-1>から10^<-6>s^<-1>までの範囲を得ることに成功した。この結果から、さらに数日実験を行えばさらに低歪速度の実現が可能であることが予測された。
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Geophysical Research Letters 35
ページ: doi:1029/2008GL033787
http://epp.eps.nagoya-u.ac.jp/~yasui