研究概要 |
(1)XFEMは従来のFEMの枠組みにおいて,局所的にエンリッチメントと呼ばれる不連続性や特異性を含む高度な近似を構成する手法であるが,その定式化の性質上,このエンリッチメントを部分的に含む要素(blending elements ; BE)が不可避的に存在し,その内部の近似法により近似精度(解の収束性)が低下することが指摘されていた.本研究では,近似精度を保証を基本とするPUFEMのXFEMへの適用法に再検討を加えることでXFEMの再定式化(PU-XFEM)を行った.1次元問題を対象とした誤差解析の結果,BEの問題の本質的な解決が示唆された.また,この理論的な評価結果を裏付けるために実施した,2次元線形破壊力学問題における数値解析の結果,本研究で再定式化したPU-XFEMは,エンリッチメントに組み込まれた既知である解の特性をより正確に再現でき,従来のXFEMと比較していずれの評価においても高い解析精度を示した. (2)近年,多くの汎用FEM解析ソフトウェアの機能が充実し,それを用いた大規模構造物の挙動に関して解析的な検討が実施されつつある.そこで,代表的な汎用FEM解析ソフトウェアのひとつであるABAQUSに対しPU-XFEM近似を実装することで,容易かつ効率的に実鋼構造に発生した板厚貫通型疲労き裂の進展をシミュレート可能な解析コードの開発を行った.ここで,実装における節点自由度の増加に関しては,多重節点を定義することでソフトウェアの規定を維持可能な方法を示した.解析コードの実構造への適用例として,鈑桁橋中間横桁に発生した疲労き裂およびバルブリブ鋼床版試験体疲労試験との比較を行った.その結果,開発した解析コードは,疲労の進展経路を精度良く再現することができ,進展寿命に関しても進展の停留の推定を含め十分な実用性を有していることを示した.
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