2009年度は、強電場でのメソンへの影響を、超弦理論のゲージ弦対応を用いて調べた。 ここで、メソンは、曲がった10次元時空に、D7ブレーンと呼ばれる8次元世界体積をもつ超弦理論のソリトン解を埋め込むことで導入され、D7ブレーンの枚数がフレーバーの数に対応する。また、電場はD7ブレーン上のゲージ場として導入される。 先行研究で、電場が小さいときは、電流がながれず、メソンの系は絶縁相となっているが、大きい電場をかけると、電流がながれる導体相となることが示され、また、導体相では、電気伝導度が計算された。 そこで、私は、カイラル対称性が破れたゲージ理論にdualな10次元時空の超弦理論を解析することで、電場によってカイラル凝縮の値がどのように変化するのかを調べた。 研究の結果、クォーク間の閉じ込めの力よりも弱い電場では、カイラル対称性が自発的に破れているが、クォーク間の閉じ込めの力以上の値の電場をかけると、カイラル凝縮の値がゼロとなり、カイラル対称性が回復することがわかった。また、カイラル対称性が破れている領域では、電流が値を持たず、絶縁相となっているがカイラル対称性が回復する領域では、電流が有限の値をもち、導体相となっていることも分かった。
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