日本各地から集め準クリシギゾウムシからDNAを抽出し、真性細菌の16rDNAに特異的なプライマーでクローニングを実施したところ、腸内細菌科の細菌を中心に様々な系統の細菌がゾウムシ体内に存在していることが明らかになった。なかでも、最も高頻度で出現した細菌(以下、一次共生細菌)は、データベース上に近縁な種が存在しない新奇な共生細菌であった。この一次共生細菌は、自由生活を行うほかの細菌に比べてDNAの塩基組成がATに偏っており、昆虫に絶対的に依存して生活する細菌であると予想された。この一次共生細菌の16SrRNAに特異的に結合する蛍光プローブを作成して、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行ったところ、雌成虫の卵巣小管への感染が確認された。この結果より、クリシギゾウムシの一次共生細菌が、雌ゾウムシ体内の卵への感染を通じて、次世代のゾウムシ個体に垂直伝播されることが推察される。 また、クリシギゾウムシの終令幼虫から消化管を取り出し、上記のプローブによるFISHを実施したところ、中腸の前半部(胃のやや後ろ)に一次共生細菌がびっしりと詰まった細胞(菌細胞)がみつかった。この菌細胞は、中腸をとりまく形で存在しており、宿主ゾウムシの消化機能に対して一次共生細菌が何らかの関与をしていることを窺わせる。
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