本年度の研究結果の一つとして「S2-HOLICs法」の開発がある。S2-HOLICs法は従来のshear解析法で用いられる楕円率のnon-dimensionとspin-2と同じ性質を持つ高次モーメントの組み合わせを用いて楕円率によるshear解析と同等の解析を行うことを可能にするものである。これらの高次モーメントの組み合わせはS2-HOLICsと呼ばれ楕円率とわずかに異なるintrinsic noiseを持つため、楕円率と並行に解析を行っても情報量を増やす事ができ、その結果intrinsic noiseを減少させる事が可能である。具体的な研究として、S2-HOLICs法の定義、測定、レンズ効果とPSF補正などの解析理論を構築した。その後、レンズsimulation「STEP」及び銀河団A1689の質量分布解析を行い楕円率の解析と比較した。STEPの解析比較によりS2-HOLICs法はKSB法の解析と比べて同等の結果を得られることを証明し、A1689の質量分布解析からS2-HOLICs法の結果を組み合わせることでnoiseを10%減少させる事ができた。今回の解析は銀河団の解析であるがintrinsic noiseはレンズ天体にはよらず背景天体に起因するものなので宇宙論パラメータの制限を可能にするcosmic shear解析でも同じくnoiseを10%減少させる事ができると期待される。そして、これらS2-HOLICs法の研究を論文にまとめ学会誌に投稿、採用決定済み。 さらに、現在行っている研究として「E-HOLICs法」の開発がある。これはKSB法で用いられているweight functionを楕円にすることで効率よくイメージを測定しレンズ効果やPSF補正の高次の計算を簡単にすることで解析精度を上昇させるものである。
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