今年度は、大正期から昭和初期にかけての技術官僚の政治的動向について重点的に研究を進めた。その一環として、東京大学工学部や国立国会図書館などで史料調査を行ったほか、2010年8月から2011年3月にかけて、米国のUC・バークレー校日本学研究所に滞在し、戦前日本の技術官僚の政治運動に多大な影響を与えたアメリカの技術者諸団体(ASCEやAICEなど)に関する史料を収集した。その成果の一部として、同研究所のセミナーで"The activities of technocrats under Political Party Rule in Japan"(「政党内閣期(1924年~1932年)における技術官僚」)と題する報告を行った。また、前受入研究者であった村松岐夫氏(京都大学法学部名誉教授、行政学)が残された文書を整理し、目録を作成して公表した。同文書には、戦後の各種審議会や研究会についての貴重な史料が含まれており、本研究を進めるうえでも大きく資するものであった(同文書は今後、しかるべき史料収蔵機閥において公開される予定である)。他に、戦前日本の政党内閣制や官僚制を考えるうえで重要な史料である「牧野伸顕日記」、「入江相政日記」、「浜口雄幸日記」についての小論を執筆した。現在、これらの研究成果を踏まえたうえで、本研究の完成を目指して研究を進めているところである。
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