昨年度の研究で発見したポリリン酸の蓄積を負に制御する新規タンパク質YjbBの機能解析を行った。アミノ酸配列の解析から、YjbBはリン酸レギュロン制御因子PhoUおよびナトリウムーリン酸共輸送体と相同性のあるドメインをもつタンパク質であることがわかった。PhoUはリン酸レギュロンを負に制御するタンパク質で、その変異株はリン酸の過剰な取込みに伴う多量のポリリン酸蓄積が起こる。yjbBをプラスミド上に乗せてphoU変異株に導入したところ、phoU遺伝子を相補した場合と同程度までポリリン酸蓄積量が低下した。しかし、予想に反してこのポリリン酸蓄積抑制機能はPhoU非依存的であった。そこで、もう一つのドメインであるナトリウム-リン酸共輸送体の機能に注目した。大腸菌ではリン酸取り込み活性を持つ四種類のトランスポーターが知られており、その全てを破壊した株はリン酸を唯一のリン源とする培地では生育できない。この多重変異株にyjbBプラスミドを導入しても同培地では生育しなかった。一方、このyjbB導入株は、グリセロールリン酸をリン源とする培養において培地中へ多量のリン酸を排出した。以上の結果から、YjbBが細胞内リン酸濃度の制御に関わるリン酸排出トランスポーターであると結論した、データベース解析から、多くの細菌のゲノムにYjbBと相同性のある配列が見いだされており、特にポリリン酸量が大きく変動するポリリン酸蓄積菌では重要な役割を果たしている可能性がある。また、トランスポーターはリン酸恒常性維持の最も重要な因子であり、ポリリン酸を含めたリン酸代謝の全体像を理解する上で重要な知見となることが期待される。
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