研究課題
本研究では、重心系エネルギー14兆電子ボルトでの陽子・陽子衝突実験であるLHC-ATLAS実験のデータを用いて、トップクォーク対を伴うヒグス粒子生成過程を探索する。その特色は、トップクォークの崩壊終状態に現れる高い運動量のミュー粒子に着目し、ミュー粒子検出器の応答を用いて、大量の雑音信号の中から、効率よくトップクォークを含む事象を同定することにある。一年目である本年度は、LHC加速器運転開始前のミュー粒子測定システムの構築・調節を最重要課題と定め、以下を達成した。1、ミュー粒子トリガー検出器システムの構築2、宇宙線信号、試験用疑似信号を用いたハードウェアの調節3、宇宙線信号を用いたミュー粒子スペクトロメータシステムの動作検証のためのデータ解析エレクトロニクスボードの実験ホールへのインストール、故障ボード発見・交換等のシステムのデバッグ、制御系のソフトウェアの開発・試験を2008年の夏までに完了させた。並行してミュー粒子トリガーシステム全32万チャンネルの信号のケーブル遅延時間の測定を実験ホールにおいて実現。この測定を基に、信号の遅延パラメタを最適化することが、コインシデンストリガー検出器が最高性能を出すために必要不可欠である。2008年のLHC陽子ビーム周回時には、この調節が25ナノ秒(光が15m直進するのにかかる時間)の精度で正確に達成されていることを、初ビーム周回日の内にデータを解析し明らかにした。また宇宙線信号を用いた試験データを解析し、検出器の位置分解能・検出効率の評価をいち早く行い、検出器の性能の評価を行うとともに、ハードウェア(検出効率が85%程度でありデザイン(90%)と比べ低い)・ソフトウェア(検出器の設置位置情報に誤りがある)の観点からの改善が必要な箇所を発見した。これらの修正を2009年度の早期に完了して、2009年秋からビーム衝突に備える。
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Proceedings of the Topical Workshop on Electronics for Particle Physics TWEPP-08, Naxos, Greece, 15-19 September 2008 CERN-2008-0008
ページ: 556-560