研究課題
本研究では重心系14兆電子ボルトでの陽子・陽子衝突実験であるLHC-ATLAS実験のデータを用いて、トップクォークを伴うヒグス粒子の生成過程を探索する。トップクォーク対生成信号を特徴とする本研究課題において、検出器のトップクォークの同定能力、及び高エネルギー陽子・陽子衝突中におけるトップクォーク対の生成確率の評価は必要不可欠となる。平成22年度中に収集された実験データ(積分ルミノシティ35/pb、衝突エネルギー 7兆電子ボルト)を用いて、トップクォーク対生成断面積の評価を、トップクォークを伴うヒグス粒子の生成過程に対する最重要課題として定め、これを遂行した。LHC-ATLAS実験が本格的に実験を開始した初年度であり、(1)実験データ解析に加え、(2)検出器実機の調節、(3)検出器実機の性能の評価を、有機的に結合し推進することが肝要である。昨年度の研究を継続し、(1)ミュー粒子トリガーシステムの調整を行いデザイン目標のトリガー効率を達成し、(2)収集されたデータより、ミュー粒子の検出効率を実測し、シミュレーションが正確にそれを再現していることを1%以下の精度で証明し、(3)その結果を踏まえ、シミュレーションと実験データを相補的に扱い、トップクォーク生成断面積の測定を実現した。特に背景事象の少ない2本のレプトン信号(電子ないしはミュー粒子)を終状態に含むモードに着目してデータ解析を推進し、18%の精度での生成断面積の測定を実現した。本研究において、LHC-ATLAS実験のトップクォークの生成・同定能力を、実験データを用いて高い精度で評価した。また、7兆電子ボルトの陽子・陽子衝突におけるトップクォークの生成断面積が、素粒子標準模型が与える予言値と、実験・理論の誤差の範囲内で矛盾しないことを示した。
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The European Physics Journal C
巻: Vol,71 Number 3(掲載予定) ページ: Article ID : 1577(1-36)
Journal of Instrumentation
巻: Volume 5 Issue 11 ページ: C11010