研究概要 |
本年度はウナギの降河回遊の開始メカニズムを総合的に明らかにするために以下の4つの調査・実験を実施した。 1.雌ウナギの降河回遊に伴うmRNAの発現変動:雌ウナギの降河回遊に伴う生理変化を調べるために、2007年に採集した雌ウナギ計103尾を供試魚とした。耳石微量元素分析を利用し降河行動の有無を調べた後、生理学的解析を行った。解析の結果、降河回遊に伴い、FSH,TSH,プロラクチンは大きな変化はせず、GHは減少し。LHは増加することが分かった。このことから、降河回遊は成長の停滞と成熟の開始に密接に関連した行動であると示唆された。 2.ビデオによるウナギの行動観察:黄ウナギと銀ウナギの行動学的な差異を調べるために、ビデオを用いたウナギの行動観察を行った。天然の黄ウナギ23尾、銀ウナギ23尾を供試魚とし、外部濾過式水槽で72時間馴致後、72時間の行動観察を実施した。 3.通過センサを利用した行動記録:銀ウナギの行動学的な特性、特に産卵回遊の開始に関わる環境因に関する知見を得るために、2008年11月28日から2009年3月5日まで通過センサを用いてウナギの行動を記録した。 4.浜名湖における雄ウナギのサンプリング:現在知見の極めて乏しい雄ウナギの知見を得るため2008年9月〜11月に浜名湖において雄ウナギのサンプリングを行った。雄61尾、雌22尾を採集した。基礎生物学的な解析により、雄ウナギの銀化は雌のそれより早い段階で起こることが分かった。
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