研究課題
Sprouty/Spredファミリー分子は、増殖因子やサイトカインによるERK経路活性化を抑制する調節因子である。我々はSprouty/Spredファミリーの生理的な役割を明らかにするためにSprouty/Spredファミリーのノックアウト(KO)マウスを作製し、解析を行ってきた。これまでにSpred1/2 DKOマウスがVEGF-C/VEGFR-3シグナルに異常を来し、リンパ管の異常を呈することを報告した。一方Sprouty2/Sprouty4 DKOマウスは100%胎生致死であり、著明な浮腫や出血を認め、心血管系の異常が疑われた。そこで、Sprouty4単独KOマウスの血管を詳細に検討したところ、リンパ管の異常は認めないが、末梢の血管が増加していることが明らかとなった。そこで、マウスの下肢虚血、背部虚血モデルを行ったところ、Sprouty4 KOマウスでは野生型マウスに比べて、血管新生の亢進を認め、虚血に抵抗性であった。さらにSprouty2およびSprouty4のshRNAを下肢虚血モデルで投与したところ、コントロール群に比べて、虚血に抵抗性であった。以上より、Sproutyは下肢虚血の新しい治療標的となることが明らかとなった。またSprouty4 KOマウスは腫瘍の皮下移植モデルにおいても、野生型に比べ腫瘍内外の血管新生の亢進を認め、腫瘍の増殖も著明に速かった。Sprouty4はVEGF-AやFGFのみならず、sphingosine-1-phosphate(SIP)シグナルも抑制することができた。以上より、Sproutyは血管新生、VEGF-A/VEGFR-2シグナルの調節因子として生理的に重要であることが明らかとなった。これらの結果をCancer Science誌とPLoS One誌に発表した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
JAMA 206(10)
ページ: 2067-2077
Cancer Sci. 100(9)
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ページ: 5467