研究概要 |
修士論文で書いた内容を英語の論文にまとめた。これは平江方言の文法項目から出発して、漢語諸方言の1人称複数代名詞の除外と包括の対立を考察したものである。これは初めて漢語諸方言の除外と包括の地理分布や対立詳細を考察したものである。 論文「平江方言の指示詞について」は初めて平江城関方言おける3系列の指示詞を、現場指示と文脈指示に分けて考察し、その使い分けを明らかにしたものである。3系列指示詞を持つ漢語方言は多く見られるが、その詳細を考察した研究はまだ少ない。 論文「平江方言における二つの3人称」は現地調査で得られた二つの三人称の機能を自作の方言コーパスで検証したものである。平江方言における二つの三人称は「会話に参与するまたは話題の中心であるかどうかで使い分けている」と定義できる。最後に、ほかの漢語方言との比較対照から、平江方言における二つの三人称の由来やその使い分けの発生のプロセスを明らかにした。 今まで研究してきた平江方言の音韻や文法現象を博士論文にまとめた。本論文は唯一平江城関方言についての体系的な記述である。漢語の方言は数多くあるが、ある方言を体系的に記述している研究は極めて少ない。本論文は平江方言の実態を知ることができ、研究方法として、母語話者がどのように客観的に自分の母語を記述するのかということに関しても参考の価値があると考えている。 地元の人の協力を得て、方言の口語コーパスを43,000字作った。現在は発音、訳などをつけている段階である。完成できれば、ほかの人も簡単にこの方言の文法現象を調べることができる。 地方歌謡計76曲の歌詞を整理し、発音表記をつけた。これらの歌謡は歌い伝えられたもので、特に最近は歌える人が少なくなっているため、あまり知られていたいものも多くある。これらの研究は地方文化の発展に役立つと考えられる。
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