研究概要 |
1:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたクロロフィル色素の分子レベル窒素・炭素安定同位体組成分析のための単離精製法の開発に取り組み,堆積物中のクロロフィル色素誘導体を、二段階のHPLCにより単離を行う手法の改善に取り組んだ。一方で、溶媒では抽出されないクロロフィル起源の化合物を、酸化的な処理によりマレイミド類として抽出して,HPLCにより抽出物中の夾雑物をほぼ取り除くことで、ガスクロマトグラフィー/燃焼/同位体質量分析計での同位体分析を可能にした。これにより、続成作用の進んだ堆積岩からも、クロロフィル起源物質の窒素同位体組成を測定し、過去の光合成生物の窒素代謝に関して研究する道を開いた。 2:シアノバクテリアの単離株を様々な条件下で培養し、それらの細胞全体の窒素同位体比、クロロフィルの同位体比、及びアミノ酸の窒素同位体組成を測定した。これにより、シアノバクテリアの細胞内における同位体組成の分布の理解が進展し、シアノバクテリアに由来するバイオマーカーの分子レベル同位体組成を解釈する上で非常に重要な基礎データが得られた。 3:堆積物中に非常に多量に見いだされるシクロフェオフォルバイドaエノールというクロロフィルの誘導体に着目し、様々な海洋堆積物中の同化合物を検出、定量した。クロロフィルを誘導して同化合物の標品を半合成した。これを用いて、シクロフェオフォルバイドaエノールをHPLCとNMR分析装置により定量する手法を開発した。 4:筑波大学と共同で、シアノバクテリアを細胞内に共生させた珪藻の同位体トレーサー実験を行なった。重窒素ガス雰囲気下で培養した共生体からクロロフィル類を抽出、単離し、宿主である珪藻だけが合成する色素が同位体ラベルされていることを確認した。これにより,共生シアノバクテリアが窒素固定を行い,宿主である珪藻への窒素を供給していることを発見した。
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