高軌道傾斜角の微小メインベルト小惑星探査を目的とした高黄緯広域サーベイの観測提案が、口径8.2mすばる望遠鏡のS08A期サービスプログラムにて採択され、2008年6月に主焦点カメラSuprime-Camを用いた約4時間の可視撮像観測が行なわれた。観測中は晴天に恵まれ、5.5平方度に亘る領域の良質なデータが得られた。解析の結果、160個の微小小惑星を検出することができた。さらに、データアーカイブシステムSMOKAから取得したSuprime-Camによるデータを解析し、5.5平方度の領域から496個の微小小惑星を検出した。検出された天体の移動速度と測光値から軌道要素と天体直径を推定し、軌道傾斜角が15度未満のグループと15度以上のグループに分類した。観測バイアスを排除した後、それぞれのグループで直径が1km未満である天体の割合を算出したところ、高軌道傾斜角のグループのそれは他方より明確に小さい値を示した。この結果は、過去に直径の小さな高軌道傾斜角の小惑星が選択的に失われたことを意味しており、メインベルト小惑星が原始太陽系円盤ガスの抵抗によって軌道減衰を受けた可能性を示唆するものである。また、上記の観測と同様の提案がすばる望遠鏡S08B期ノーマルプログラムにも採択され、2008年8月に2夜の観測時間を得た。幸い天候は好条件となり、27平方度という大変広い領域をサーベイすることができた。このデータから、高軌道傾斜解角をもつ微小メインベルト小惑星の詳細なサイズ分布が明らかになるが期待され、解析を進めている。
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