研究概要 |
(1)母親のふりシグナルとトドラーのふりの理解 昨年の調査では,母親は子ども(1歳半)の前でふりをして見せるときに,微笑や子どもへの注視,オノマトペを含む効果音など(これら全体をふりシグナルとする)を多用することを明らかにした。本年度では,これらの母親のふりシグナルと子どものふりの理解についての関連を検討した。その結果,母親がよく微笑し,子どもをじっと見つめ,効果音を多用するほど,その子どもは母親がふりをしているのだと理解しやすいことがわかった。この調査により,ふり遊びにおける母親のふりシグナルが文化普遍的な行動であることが示唆されたことが重要である。 (2)1の追跡研究-母親のふリシグナルと後のトドラーのふりの理解- 調査(1)の子どもの追跡を行い,子どもが1歳半時点での母親のふりシグナルが後(半年後)の子どものふりの理解に及ぼす影響を検討した。その結果,1歳半時点のときに母親による多くのふりシグナルが与えられていたほど,子どもは2歳になったときにふりの理解に優れていることを示した。また,1歳半のときに優れたふりの理解を示していた子どもは,2歳のときにも同様に優れたふりの理解を示した。 (1)と(2)の調査より,子どもがふり遊びに参加しはじめる1歳半のときに母親がふりシグナルによってふりと現実の区別を明確に示すことが,1歳半時点だけでなく後の子どものふりの理解を促進することが明らかになった。 (3)トドラーのふりにおける意図の理解 注視法を用いて,1歳半時がふりをする人の「~(例:食べる)かのようにしているつもり」という,ふり特有の意図を理解していくプロセスを検討した。結果については現在分析中である。
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