本研究では、RNAの部位特異的修飾を目指し、官能基を転移する機能性核酸の開発を行った。これまでに、ジカルボニルユニットをもつ官能基を用いることで、シトシン選択的な修飾に成功していた。しかし、この確立したRNA修飾技術を実用化する際、本分子の高い反応性とともに高い安定性が求められる。そこで本研究では効果的な誘起システムを構築し、安定性・反応性を兼ね揃えた新規官能基の開発を目標に研究を行った。 1つの試みとして、0-ニトロベンジル基の光反応を利用した光誘起性官能基転移プローブを設計・合成し、機能評価を行った。光を照射しなければ、非常に安定であるが、光を照射すると反応部位が著しく活性化し、標的部位と瞬時に反応する、という概念を基にこのプローブを設計した。種々検討を行った結果、DNA、RNAの主要塩基に対する転移反応は観測することはできなかったが、興味深いことに、5-メチルシトシンとだけは反応することを発見した。この塩基は生体内に存在する修飾塩基の1つであり、遺伝子発現のオン・オフを司っていることが示唆されている。この反応は、5-メチルシトシンに関する有用な技術に展開できると考えている。 一方、これまでに開発していたジカルボニルユニットをもつ官能基をさらに検討したところ、おもしろい現象を発見した。従来この反応は中性条件でシトシシ選択的に進行していたのだが、アルカリ性条件で同様の反応を行ったところ、シトシンではなくグアニンに対して選択的に反応することを発見した。しかも、この反応はわずか10分で80%もの反応進行が観測された。この反応を詳細に調査したところ、グアニンの2位アミノ基と反応していることを解明した。pHが制限されるため、細胞内への適用は難しいものの、RNAを標識する技術としては非常に有用な反応であるといえる。現在RNA標識技術へ展開すべく、準備を進めている。
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