研究課題
本研究では、RNAの部位特異的修飾を目指し、官能基を転移する機能性核酸の開発を行った。これまでに、ジカルボニルユニットをもつ官能基を用いることで、中性条件下でシトシンに対して、また、アルカリ性条件下でグアニンに対して選択的な修飾に成功していた。このグアニン選択的な反応は、わずか10分で80%以上もの収率で進行し、この反応生成物の構造をNMR、MSなどにて詳細に調査したところ、グアニンの2位アミノ基と反応していることを解明した。さらに、2-アミノプリンやヒポキサンチンを用いた比較実験により、この反応性の著しい増加はグアニンのエノレート構造によるものであることが分かった。この知見を基に、本年度では、中性条件でグアニンを修飾することを目指し研究を行った。この目標に対する試みとして、遷移金属カチオンの利用を考えた。Ni^<2+>やCo^<2+>などの遷移金属カチオンはグアニンのN7位に配位し、それに伴い、N1位のpKaを低下させることが知られている。実際に、Ni^<2+>やCo^<2+>存在下、pH7.4にて反応を行ったところ、アルカリ性での活性化と同様、グアニンに対する著しい反応性の向上を確認した。さらに、グアニン誘導体である8-オキソグアニン、デアザグアニンと比較することで、この反応の促進が金属のN7への配位に依存することを明確にした。次に、RNAラベル化技術への展開を志向し、ピレン転移性官能基の合成・評価を行った。この官能基は、シトシンに対しては進行しなかったが、アルカリ性条件下、グアニンに対して著しい選択性・反応性をもって進行した。現在、さらなる展開としてこの官能基転移反応とクリックケミストリーを合わせた技術の開発に取り組んでおり、ポジティブな結果が得られている。
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