研究概要 |
本研究ではRNAの部位特異的修飾を目指し、官能基を転移する機能性核酸の開発を行った。これまでに、ジカルボニル型のα,β不飽和ケトンを転移基とすることで、中性条件下でシトシンに対して、アルカリ性条件下または遷移金属カチオン存在下でグアニンに対して選択的な修飾に成功していた。引き続き、金属錯体形成による転移官能基活性化を検討するため、金属キレート部位をもつ2-ピリジンモノケトン型転移基を設計した。様々な2価の金属カチオンを用いて反応の検討を行ったところ、触媒量のNi^<2+>でシトシン選択的に進行することを見出した。さらに大過剰のNi^<2+>存在下では選択性がグアニンに変わることも見出した。2-ピリジンモノケトン型転移基は、金属非存在下では非常に安定であること、極微量の金属によって反応の制御が可能であることから、ラベル化やRNA編集技術等様々な展開が可能である。 次に官能基転移反応をクリック反応と組み合わせることで、簡便かつ効率的なRNAの部位特異的修飾法を検討した。具体的には、末端アルキンを持つ転移基を合成し転移反応の検討を行った。その結果、わずか10分で90%のRNAを修飾することに成功した。続いて、蛍光基やビオチン等の様々な化合物のアジド体を用いクリック反応を行った。反応は単純な化合物では10分以内に、大きな化合物でも50分以内に定量的に進行した。さらにこのラベル化法をmRNAに対して行ったところ、ビオチン基を修飾することに成功した。この迅速かつ高収率なラベル化法は、これまでにない画期的な手法であり、今後、多種多様の修飾が可能になると考えている。
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