擬一次元導体ベータ・バナジウム・ブロンズβ-Na_<0.33>V_2O_5の基底状態は、電荷秩序型絶縁体であるが、高圧下では金属となり、金属絶縁体転移近傍の圧力下(約8GPa)において超伝導相が出現する。この超伝導相は、バナジウム酸化物として初の超伝導であること、電荷秩序相と隣接することから、新奇な超伝導発現機構が期待され注目を集めている。本年度は、金属相におけるスピン・電荷物性のカチオン依存性、および、圧力依存性を明らかにするため、以下の研究に取り組んだ。 我々は、金属相のカチオン依存性を調べるため、擬一次元導体β-Li_<0.33>V_2O_5を取り上げ、単結晶試料を用いた角度制御型NMR測定を行った。X線回折実験による結晶構造解析では、Liイオンの原子配列に関して不明な点があったが、^7Li核のNMR測定からLiイオンが室温からジグザグ秩序を形成していることを明らかにできた。また、^<51>V核のNMR測定を行ったところ、Liのジグザグ秩序に伴いラダー内において電荷不均化と磁気揺らぎの異常な増強が生じることを見出した。これらの結果は、「(11)研究発表」、「雑誌論文」の1番として出版された。また、「学会発表」の1番として発表した。 また、高圧下金属相の電子構造、および、磁気相関を明らかにするため、2軸回転機構付きのピストンシリンダー型高圧セルを用いて、単結晶試料を用いた2.4GPaまでの角度制御型NMR測定を行った。その結果、Naの秩序化によりラダー内において電荷不均化が生じること、加圧によりその電荷不均化は著しく抑制されることを見出した。また、各Vサイトの静磁化率を比較したところ、全てのVサイトのスピン磁化率が加圧に伴い減少した。これは、各ラダーの電子充填率は圧力に依存しないことを示唆している。これらの結果は、「(11)研究発表」、「学会発表」の2、3、4番目として発表した。
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