ヒト細胞表面抗原HLA-B27の異常型ホモ二量体(B27_2)が、免疫制御受容体LILR群との相互作用によりリウマチ性自己免疫疾患のひとつ、強直性脊椎炎(AS)を引き起こす分子認識機構を、立体構造解析の観点から明らかにすることを目的として研究を行った。 まず、HLA-B27は提示するペプチドに受容体との結合が依存しているか否かを検討した。通常型のHLA-B27および異常型のB27_2をそれぞれ3種および14種の報告のあるペプチド断片とともに調製し、受容体LILR群(8種類)との結合の有無、結合能の差異の有無を表面プラスモン共鳴法(ビアコア)を用いて検討した。結果、HLA-B27は既知の受容体LILRB1(Kd=6〜7μM)、B2(Kd=22〜24μM)以外のLILRとは結合せず、その結合力は提示するペプチドに依存しないことが明らかになった。 一方、異常型のB27_2は、既知の受容体LILRB2以外にLILRA3、LILRB5にSPRレスポンスが認められ、異常型B27_2特異的に結合するLILR受容体が存在する可能性が示唆された。今後、LILRA3およびLILRB5については、非特異レスポンスなのか、特異的な結合によるレスポンスなのか、検討を重ねる必要があると考えている。また、LILRB2とB27_2の結合力は提示するペプチドに依存する(Kd=23〜105μM)ことがわかった。検討したペプチドには非自己由来のものも含まれるため、ウィルス感染とAS発症の関連を分子認識機構の観点から説明できるか、検討を重ねる予定である。 来年度は、B27_2単独および受容体LILRB2または新規のB27_2特異的LILR受容体との複合体の結晶構造解析を開始するとともに、さらなる相互作用解析を行い、B27_2と受容体LILRとの分子認識機構を明らかにしていきたいと考えている。
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