研究概要 |
HLA-B27の異常型β2mフリーホモ二量体(B27_2)が、LILR群との相互作用により、強直性脊椎炎(AS)を引き起こす分子認識機構を、立体構造解析の観点から明らかにすることを目的としている。 B27_2の調製の精製度に昨年度から問題点があり、結晶化に至らなかったため、今年度は、まずその精製度を挙げる変異体の探索を試みた結果、実際にS-S結合が必須であるかは分からないが、Cys67がB27_2形成に重要であることがわかった。また、LILRB2の^<15>Nラベル体を調製し、約80%の主鎖ピークが十分な分離で得られることができたため主鎖ピークを各アミノ酸に帰属することによって、B27_2との結合領域の同定を進めていく目途が立った。次に、分子動力学的に、β2mフリーのB27とLILRB2の結合をシミュレーションすると、α3ドメインとの結合は維持され、重鎖のK121、D122が新たにLILRB2と相互作用する計算結果が得られた(理研・杉田、宮下博士との共同研究)。その結果に基づき、変異体を用いたLILRB2との結合実験を行った結果、D122が重要であることが示唆された。最後に、ペプチド依存的にLILRB2との結合能が変化するHLA-B27/ペプチド(GAG:KRQIILGLNK、GAGL6M:KRWIIMGLNK)(JEM,2007)-LILRB2複合体の結晶構造解析を行い、複数の条件で結晶が観察されたが、その後の結晶化条件の最適化(pH、塩の種類、塩濃度、PEG濃度)がなかなかうまくいかない。今後引き続港結晶化条件の最適化を進め、結晶構造を明らかにする予定である。 来年度は、以上の研究を進めることによって、複合体の立体構造解析および結合に重要な残基の同定を行う予定である。
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