ヒト細胞表面抗原HLA-B27の異常型β2mフリーホモ二量体(B27_2)が、免疫制御受容体LILR群との相互作用により、リウマチ性自己免疫疾患のひとつである強直性脊椎炎(AS)を引き起こす分子認識機構を、立体構造解析の観点から明らかにすることを目的としている。 今年度はまず、分子動力学的なLILRB2とβ2mフリーのHLAの結合シミュレーションの結果、昨年度得られたK121、Dl22に加え、新たにQ115、D118、R14、E229、D196、E232、D227-E232、V248、V194-E198がLILRB2と相互作用していることが分かった(理研・杉田、宮下博士との共同研究)。そのうち、特にR14、D118、E232はβ2mフリーのHLAの時にのみ相互作用する残基であることが分かった。このシミュレーション結果をもとに、重要な相互作用残基の同定を目指し、実験的に表面プラスモン共鳴法で解析するためにサンプルを準備した。 また、結晶化に関しては、共同研究先(Oxford大学・Paul博士ら)が作製したB27_2特異的抗体を用いたB27_2の精製および抗体との複合体の結晶化を目指して、サンプル供与・条件の準備を引き続き行っている。ペプチド依存的にLILRB2との結合能が6倍程度変化すると報告のあったHLA-B27/ペプチド-LILRB2複合体の結晶構造解析に関しては、昨年度に引き続き、LILRB2:B272=2:1で混合したサンプルの結晶化条件の最適化(pH、塩の種類、塩濃度、PEG濃度)を進めたが、目立った改善は認められず、解析に十分な分解能を得られていない。 今後も引き続き、リウマチ性疾患因子HLA-B27と免疫制御受容体LILR群の分子認識の解明を目指した研究を行う予定である。
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