研究概要 |
本年度は、主に2002年のSubaru/XMM-Newton Deep Surveyで得られた観測データを用いて、遠方までのIa型超新星の発生頻度(Rate)を求めた。2002年の上記のSurveyでは、すばる望遠鏡のi'-bandによる多数回の測光観測が行われ、約1000個の変光天体が検出された。私は、この変光天体の光度曲線と、超新星テンプレートを比較することで、Ia型超新星を選び出す作業を行った。結果として、50個のIa型超新星を選定することが出来た。超新星のタイプ決定を行うには、通常はスペクトルから行えば確かなのだが、本研究では、測光情報のみから判定をしているので、タイプ決定に不定性が生じる。その不定性を評価するために、私はモンテカルロシミュレーションによって、仮想超新星を約100,000個発生させて、観測結果から得られたサンプルに施した手法と同様の手法を用いて、タイプ分類を行うことで、Ia型をIa型と何割判定できるか?またII型をIa型と何割判定ミスしてしまうか、を調べた。この結果をふまえて、観測で得られた超新星数を補正した。 結果として、我々は、0.2<z<1.4の範囲で上昇していくようなIa型超新星rateを、少ない誤差の中で初めて得ることができた。この結果と精度は、Hubble Space Telescopeによって得られた結果(Dahlen et al.2008)に匹敵するものであり、宇宙望遠鏡と同様のクオリティで、地上の望遠鏡を用いて得られた、たいへん貴重な結果である。現在、この結果を論文としてまとめつつあり、まもなく投稿予定である。また、本研究の成果は、10月に東北大学の談話会にて、2月に愛媛大学の談話会にて、Ia型超新星と観測的宇宙論のレビューとともに、発表を行った。また、3月に日本天文学会にて、成果を発表した。
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