研究課題
本研究では、京都郊外の野における具体的な風景づくりの事例調査を通じて、各対象地での様々な景観形成と、人々の風景に対する価値評価の歴史的展開を追いながら、各時代の景観資産が現代まで保たれてきた要因と、その要因となった創造的な景観計画の意匠の実体を明らかにした。本研究の成果は以下の通りである。(1)京都・嵯峨野を対象に、平安時代以降の文芸に現れる象徴的な風景表現や、紀行文等にみる人々の風景の鑑賞方法についての分析を通じて、風景の発達プロセスについて明らかにした。さらに、近世後期から近代にかけての名所の再興における空間づくりの経緯と意図を明らかにし、また、近代以降の嵯峨野の土地利用等の物理的環境の変容過程を明らかにすることで、嵯峨野における風景の持続性を評価し、その要因を明らかにした。(2)平安京郊外の別業における地形囲繞の空間的構造について、標高データから作成した3次元CGを用いて、地形と見えとの関係および領域性の分析を行った。さらに、文学作品の風景記述の分析を通じて、その景観的価値について考察した。(3)江戸期文人の山荘にみる視点場の創造とその意図については、3次元地形モデルを用い、その地形の景観的特性を利用した見えの操作手法・工夫を考察した。さらに、文人の残した日記などの風景記述の分析を通じて、その景観的価値について考察した。(4)京都の山裾地形上の古庭園における眺望景観の特性について、敷地周辺の地形のもつ景観的特性をどのようにいかした敷地デザイン、建築・造園デザインが行われていたかを考察した。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
WSEAS TRANSACTIONS on ENVIRONMENT and DEVELOPMENT Issue 8, Vol. 4
ページ: 655-665
土木学会論文集 Vol. 64, No. 4
ページ: 598-607