研究課題
【1.特異スペクトル分析の応用によるオーロラ嵐の前兆検出アルゴリズムの開発】オーロラ嵐の基礎研究・予報研究の両面から、地上磁場データからオーロラ嵐の前駆的兆候を捉えることを目的とした変化点検出アルゴリズムの開発を進めた。変化点検出とは、時系列データの時間構造が急激に変化する時刻を推定する問題である。我々が応用を進めているのは、特異スペクトル分析(SSA)を応用したアルゴリズムである。SSAによる変化点検出は、近年工学システムの異常検知などで応用が進んでいる。我々は、本手法の応用により、従来は検出困難だったオーロラ嵐の微細な前兆を、地上磁場データから検出することが可能になると期待している。とくに、従来では一変量時系列の枠組みで行われていた変化点検出を多変量時系列に拡張することにより、従来手法よりも精度良く前駆的兆候が検出できることが分かった。【2.Pi2型地磁気脈動の生成・伝搬機構解明のための周波数領域独立成分分析(FDICA)の応用】オーロラ嵐の発生に伴って、Pi2型と呼ばれる突発的な地磁気脈動が汎世界的に観測されることが知られている。一方で、その発生機構や地表面までの伝搬過程は未解明であり、地上に多点展開されている地磁気観測網で得られるデータの統括的な解析・解釈が求められている。しかしながら、地上で観測されるPi2には磁気圏における生成機構と伝搬機構の情報が時空間的に重畳しており、それが地上Pi2の波形の複雑さを助長する要因となっている。我々は独立成分分析(ICA)という新機軸の処理手法をPi2解析に導入し、地上多点観測された出力波形(地磁気脈動)から入力波形(発生領域での元変動)とフィルター効果(伝搬機構による変調)とを分離・抽出する試みを行ってきた。とりわけ、磁気圏における磁気流体波動の伝搬機構を反映した情報を抽出するため、複数の伝搬経路を考慮した周波数領域ICA(FDICA)の導入を進めた。一般的に、FDICAでは前処理として短時間フーリエ変換が用いられるが、Pi2のような突発的な波形にも柔軟に対応できるよう、ウェーブレット変換を用いたバンドパスフィルタをFDICAの前処理として導入した。
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Proceedings of the 6^<th> Space Environment Symposium.
ページ: 260-265
Sun and Geosphere (In press)
J.Geophys.Res. 114, A11207
ページ: doi : 10.1029/2009JA014163