イネの炭酸塩耐性に関係すると考えられた21遺伝子について詳細な遺伝子発現解析を行ったところ、炭酸塩にのみ特異的に応答する遺伝子はなく、イネで炭酸塩ストレスに特異的に応答する遺伝子は見いだせなかった。 イネ科野生植物のChloris virgata(C.virgata)のcDNAライブラリーから得られたESTデータの、NCBIデータベースへの登録を行った。それと同時に、C.virgataのESTデータベースを解析し、シロイヌナズナやイネにおいて耐性に関与することが報告されている遺伝子のホモログを中心に、炭酸塩耐性に関与する可能性のある遺伝子を16遺伝子選び出した。これら16遺伝子のストレス応答性を解析したところ、炭酸塩処理により特異的に発現量が上昇する遺伝子は見出されなかった。一般的に塩耐性植物において細胞内のNa^+濃度の調節に関係する遺伝子群が恒常的に発現していることが知られており、同様にC.virgataにおいても、塩耐性、活性酸素除去、物質輸送などに関与する遺伝子群が恒常的に発現しており、それらがC.virgataの炭酸塩耐性を担っていることが予想された。 また、金属結合性タンパクのMetallothioneinl(MT1)を、C.virgataとイネから単離し、それらの過剰発現体シロイヌナズナの金属含量の測定を行った。その結果、WTと異なり各形質転換体では高い鉄含量を維持し、また、形質転換シロイヌナズナの根の鉄の取り込み経路に関与する遺伝子群の発現が野生型と形質転換体とで違いが無いことを確認した。このことから、導入したChlMT1a、OsMT1a、OsMT1bが鉄の恒常性維持に関与していることが示された。
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