研究概要 |
前年度までの研究により、骨芽細胞においては高濃度の細胞外グルタミン酸(Glu)により、Xc輸送系の逆行性輸送活性が亢進して、増殖性が抑制されるという結果を得た。また、xCT遺伝子を強制発現することにより細胞の増殖能は強制発現細胞においてコントロール群に比べて有意な上昇が確認された。さらに強制発現細胞では、細胞内のグルタチオン量は増加していた。本年度は分化過程の影響を確認した。0,7,14,21,28日目の細胞を回収し、alkaline phosphatase(ALP)活性を評価した。その結果、xCTの強制発現細胞では、コントロールの細胞に比べて、ALP活性の有意な抑制効果が確認された。また、各日数培養した細胞よりtotal RNAを回収し、各種骨形成マーカーのmRNA発現をRT-PCR法により検討したところ、runx2, osteocalcin,ALP,のmRNA発現が、コントロール群に比べてxCT強制発現群で有意に減少した。抗runx2抗体、および抗xCT抗体を用いた免疫沈降を行った結果、xCT抗体、runx2抗体、いずれの抗体を用いた免疫沈降サンプルを用いた場合においてもrunx2および、xCTのバンドが検出された。以上のことより、xCTとrunx2がたんぱく質同士で相互作用している可能性が考えられた。そこでさらに、たんぱく質相互作用の可能性を検討する目的で、MC3T3-E1細胞に、osteocalcinのプロモーター領域あるいは、RUNX2結合サイトを含んだルシフェラーゼベクターを作成することにより、RUNX2による転写活性化能について検討を行った。その結果MC3T3細胞におきましては、コントロール群に比べrunx2の発現ベクターをトランスフェクトした群において、ルシフェラーゼ活性の著明な上昇が確認されたが、xCTを共に強制発現させると、その転写活性はいずれにおいても著明な減少が確認された。また、xCT強制発現細胞においても同様にRunx2による転写活性は有意な減少が確認された。以上の結果より、xCT遺伝子は細胞の増殖能のみならず、分化能にも影響を及ぼす可能性が示唆される。
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