本研究では、重力崩壊型超新星の爆発メカニズム、並びに爆発時に形成される原始中性子星のキック・スピン現象の解明を目的として、定在降着衝撃波の不安定性(SASI)の三次元数値流体シミュレーションを行っている。昨年度は、主に回転がSASIに与える影響と、SASIが原始中性子星のキック・スピン現象とどのようにかかわっているかについて調べた。本年度は、SASIが原始中性子星に与える運動量について統計解析を試み、2009年の9月に行われた天文学会で発表した。また、回転SASIのデータを使って、共同研究である重力波の解析も行った。 中性子星は重力崩壊型超新星が爆発した後に形成される天体であり、周期的な電磁パルスを放出する観測可能な天体である。中性子星は、平均400km/sで並進運動しており、爆発前の星よりも速い固有速度を持っている。この現象を中性子星キックと呼ぶが、そのメカニズムはよくわかっていない。本研究では、中性子星キックが爆発の非球対称性によるものであり、その非球対称性はSASIによるものであると考える。SASIが原始中性子星に与える運動量を調べ、その統計的な性質を明らかにすることで、観測結果が示す統計的性質と比較する。もし、SASIが原始中性子星に与える運動量の統計的性質が、観測結果が示すものと同様であれば、爆発時にSASIが発生している可能性をより強く示唆することができる。SASIの直接観測は、ニュートリノや重力波による観測の可能性が提案されてはいるが、現時点では困難であり、中性子星キック現象との関連を示すことで間接的にSASIの存在を示すことは大変意義がある。
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