本年度は研究対象6校のうち、同志社女子大学・お茶の水女子大学・日本女子大学(旧、同志社女子専門学校・東京女子高等師範学校・日本女子大学校)を中心に、以下の3点から調査・検討を行った。1、各校所蔵の同窓会誌・学校史等から、各校の留学生数(出身地別)と留学生政策・処遇を明らかにしうる史料を収集した。これは、女子留学生の全体像を把握する基礎作業として重要である。2、留学生政策のみならず近代女子教育に大きな影響を与えた男性知識人の思想を明らかにするため、麻生正蔵・海老名弾正・柳宗悦の著作を収集した。三者の共通点は、朝鮮への関与と同志社関係者であったことであり、人脈と教育思想との帝国主義との関わりを考察するための材料を獲得したと言える。3、教育を通して形成された「他者」認識を考えるため、同志社女専で1925〜30年に実施された朝鮮・「満洲」旅行について考察した。新聞記事と学校の庶務史料、旅行記から、旅行意図とその影響について、引率の柳宗悦夫妻の思想や学生による旅行体験の意味化を通じて明らかにした。 また研究成果を学界に問うため、2度の学会発表を行った。1、「東アジア宗教文化学会」では、キリスト教主義と近代教育が「外国・植民地」出身者の日本留学に与えた影響に着目したが、これは、アジアの近代にとってキリスト教のもつ影響力は大きく、教育のみならず近代文化受容の意味からも看過できないためである。2、「日本思想史学会」では、同志社女専の留学生政策と実態を提示するとともに、国家儀礼(皇后行啓)に着目した。留学生表象を通じて、「国際化」をめぐる「帝国」の思想を問題化しえたと考えている。
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