研究概要 |
我々はLC/MS分析法でTetrodotoxin(TTX)類を定量してフグ中での分布を調べたところ、フグ卵巣では5,6,11-trideoxyTTXはTTXと同程度に多量に含まれることがわかった。そこで、この類縁体が段階的な還元反応を経てフグ体内でTTXへ変換するのかどうか、あるいはTTXが還元的な代謝をうけてtrideoxyTTXへ変換するのかどうかを調べることを目的にした。(1)イモリとミドリフグに投与した非ラベル体と^<13>Cラベル体5,6,11-trideoxyTTXの変換反応実験-大阪市立大との共同研究で、大船らが合成した^<13>Cラベル体trideoxyTTXを用いて変換反応の実験を行った。ミドリフグの背中に^<13>Cラベル体trideoxyTTXを投与して2週間及び4週間飼ってTTX類を抽出する。抽出物はLC/MSに供して変換反応を検討した結果、イモリとミドリフグの体内では、変換反応が示されなかった。(2)養殖無毒のクサフグを用いたTTX類の変換反応の検索-東京大学河野らとの共同研究で、供与された無毒のクサフグを用いて変換反応実験を行った。まず、餌に混ぜたTTX類をクサフグに食べさせ、変換反応を調べたところ、TTXから他の類縁体への変換反応は示されなかった。(3)TTX生産起源生物の検索-北里大学山森との共同研究であり、鬼沢漁港から採集したプランクトンからTTX類が検出され、現在は実験結果の再現性を調べている。(4)ミドリフグの毒性分・含量の分析-我々が確立したLC/MS法を用いて東南アジアに棲息するミドリフグの毒成分と含量を調べた。特に日本産のフグに多く含まれているTTX、5,6,11-trideoxyTTXがミドリフグにも多く含まれていて、その毒量はTTXが0.6〜293.7nmol/g、5,6,11-trideoxyTTXが0.4〜150.6nmol/gであった。
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