• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2010 年度 実績報告書

サイコパシーの合理性と非合理性:対人的意思決定におけるその機能の検討

研究課題

研究課題/領域番号 08J05962
研究機関名古屋大学

研究代表者

大隅 尚広  名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワードサイコパシー / 意思決定 / 最後通牒ゲーム / 感情 / 公正性 / 利己性 / 扁桃体 / 前部島皮質
研究概要

これまでの研究において,他者からの不公正な金銭の分配を受け入れて利得を得るか,それとも拒絶して互いの利得をゼロにするかという意思決定場面(最後通牒ゲーム)におけるサイコパシー特性の影響を検討した結果,サイコパシーの利己性が高い個人は不公正を受諾する傾向が高いことが示された。この課題における不公正の拒絶は非合理的であるが,公正規範を犯した他者への罰,あるいは公正性の回復(不平等への嫌悪反応)としての意味があると考えられる。そこで,他者への罰の動機を検討するため,他者が意図的に不平等な分配を行った条件と,他者が意図せずに分配金額が不平等になってしまった条件における意思決定を比較した。その結果,実験参加者の拒否率は意図の有無という要因では変わらず,サイコパシーの影響のみが見られた。つまり,これまでの実験における拒否行動には罰の動機は含まれず,不平等への嫌悪反応を基盤としている可能性が示唆された。そして,このことから,サイコパシーによる拒否率の低下は嫌悪反応の低下であるということが推測される。また,この結果は,脳神経イメージングを行った前年の実験の結果,すなわち,嫌悪感情の脳表象であると考えられている前部島皮質が拒否率と相関すること,そしてサイコパシーによって前部島皮質の活動が低下することと整合性をもつ。また,イメージングの結果をさらに解析すると,サイコパシー傾向による前部島皮質の活動の低下が扁桃体の活動の低下と機能的に関連することが明らかになった。つまり,サイコパシーによって不公正が受諾される背景には扁桃体の機能低下の関与が示唆され,サイコパシーの扁桃体の機能低下説を支持した。この結果は,日本パーソナリティ心理学会第19回大会にてポスター発表された。また,国際学術雑誌に投稿予定となっている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2010 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 心の闇の側面 -サイコパシーにおける感情の機能低下2010

    • 著者名/発表者名
      大隅尚広, 大平英樹
    • 雑誌名

      感情心理学研究

      巻: 18 ページ: 2-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The positive side of psychopathy : Emotional detachment in psychopathy and rational decision-making in the ultimatum game.2010

    • 著者名/発表者名
      Osumi, T., Ohira, H.
    • 雑誌名

      Personality and Individual Differences

      巻: 49 ページ: 451-456

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 社会環境への適応を果たす脳神経基盤2010

    • 著者名/発表者名
      大隅尚広, 大平英樹
    • 雑誌名

      生理心理学と精神生理学

      巻: 28 ページ: 57-66

    • 査読あり
  • [学会発表] サイコパシーによる扁桃体活動の低下が公正選好に及ぼす影響 -脳領域間の機能的関連の検討2010

    • 著者名/発表者名
      大隅尚広, 中尾敬, 大平英樹
    • 学会等名
      日本パーソナリティ心理学会第19回大会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(東京都)
    • 年月日
      2010-10-11
  • [学会発表] Cardiac responses predicting decision-making in socially threatening situations.2010

    • 著者名/発表者名
      Osumi, T., Ohira, H.
    • 学会等名
      50th Annual Meeting of Society for Psychophysiological Research
    • 発表場所
      Portland Marriott Downtown Waterfront (Portland, USA)
    • 年月日
      2010-10-01
  • [学会発表] サイコパシーにおける非機能的態度と抑うつ傾向の関連2010

    • 著者名/発表者名
      大隅尚広, 大平英樹
    • 学会等名
      日本心理学会第74回大会
    • 発表場所
      大阪大学(大阪府)
    • 年月日
      2010-09-20
  • [学会発表] A role of the anterior insula in altruistic punishment : An fMRI study using the ultimatum game and the dictator game.2010

    • 著者名/発表者名
      Osumi, T., Nakao, T., Kasuya, Y., Shinoda, J., Yamada, J., Ohira, H.
    • 学会等名
      15th World Congress of Psychophysiology
    • 発表場所
      Budapest Marriott Hotel (Budapest, Hungary)
    • 年月日
      2010-09-03
  • [備考]

    • URL

      http://www.lit.nagoya-u.ac.jp/%7Eohiralab/Osumi.htm

URL: 

公開日: 2012-07-19  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi