間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞において、グルタミン酸(Glu)が、その増殖性および骨芽細胞分化を抑制することをこれまでに報告してきた。そこで今回は、脂肪細胞分化に対する影響および骨芽細胞分化抑制メカニズムについて解析を行った。その結果、Gluの持続曝露は脂肪細胞の染色性には著変を与えなかった。また、Gluの骨芽細胞分化抑制効果の作用分子を検討する目的で、Glu受容体およびGlu輸送体の基質や阻害剤を用いて解析を行った。その結果、発現の認められたGlu受容体のアゴニストは骨芽細胞染色性に著変を与えなかったが、シスチン/Glu交換輸送体の競合阻害剤であるHCAによって染色性は減少し、シスチンの同時曝露はGluによる骨芽細胞分化抑制効果を、細胞染色性および分化マーカーのmRNA発現において回復した。また、このシスチンによる回復効果がシスチン/Glu交換輸送体を介したものかを確認するため、シスチンの取り込み能に対するGluの影響について解析した。その結果、シスチンの取り込みはGluおよびHCAによって有意に阻害され、機能的シスチン/Glu交換輸送体の存在が骨芽細胞分化を制御している可能性が示唆された。続いて、その下流に予想される細胞内グルタチオン量制御が骨芽細胞分化に与える影響について検討した。その結果、骨芽細胞染色性はグルタチオン合成阻害剤のBSOおよび枯渇剤のCHX曝露により著しく減少し、還元型グルタチオンや前駆体であるNACの曝露により有意に上昇した。また、Glu曝露によって、細胞内還元型グルタチオン量が有意に減少していることが明らかとなった。以上の結果から、間葉系幹細胞においてGluは、シスチン/Glu交換輸送体を介する細胞内シスチン取り込み、およびそれに続く細胞内グルタチオン合成を減少させることから、骨芽細胞分化に対し抑制的に作用すると示唆される。
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