生活習慣病予防および介護予防における筋力トレーニングの有効性は繰り返し指摘されているが、高齢者に対する筋力トレーニングの普及方策はほとんど検討されていない。本申請課題の目的は、高齢者の筋力トレーニング実施を促す地域介入手法を開発することであった。本年度は、その第一段階として筋力トレーニングクラブの会員14名(66.4±3.9歳)を対象とした形成的研究を実施し、筋力トレーニングの実施理由と、筋力トレーニングに対するイメージがどのようなものであるのかについて、半構造化面接法により検討した。その結果、「筋肉や身体の衰えに対処するため」、「ダイエットやメタボ対策のため」、「何となく身体を動かすことが必要だと感じたため」等が、筋力トレーニングを始めた理由として挙げられた。一方、筋力トレーニング実施前に抱いていた筋力トレーニングのイメージについて言及した8名のうち、6名が「実施前は、筋力トレーニングの知識やイメージが不足していた」と発言していた。これらの結果から、1)筋力トレーニングに興味がない高齢者においても筋力トレーニングの潜在的ニーズはあり普及の余地がある、2)自分自身と結びついた筋力トレーニングの知識・イメージを持っていない高齢者が多い、の2つの仮説が導き出された点が、筋力トレーニングの普及方策検討という文脈における本研究の意義と重要性である。この仮説が実証されれば、筋力トレーニングの潜在的ニーズを喚起し、高齢者と関わりのある筋力トレーニングの知識・イメージを高める介入手法開発の必要性が示唆されるだろう。本研究のより詳細な解析の実施と、上記仮説の検証が、次年度の研究課題である。
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