研究概要 |
本研究課題は,地殻上部の変形挙動に対する大気中ラドン濃度・放射線の応答および地震前兆として生じる前駆現象との関係を解明することを目的とする.本年度は,以下の2つの研究成果を得た. 1.宮城県牡鹿半島の大気中ラドン濃度季節変動:ラドンを介した地殻-大気間の相互作用が地震前兆期の電磁気現象に重要な役割を果たしていると考えられる.しかし,気象要素の影響を評価する必要があり,地震前兆期の地殻-大気間の相互作用は明らかではない.本研究では,宮城県牡鹿半島の大気中ラドン濃度が夏季と冬季にピークを持つことを示した.冬季のピークは気象要素変動の寄与が高い一方,夏季は地殻からのラドン放出の寄与が高いことを明らかにし,季節により大気中ラドン濃度の変動要因が異なることを指摘した. 2.大気中ラドン濃度と気象要素に基づくラドン散逸率の推定:ラドンに関する地殻-大気間の相互作用を特徴づけるのは,両者間の移動量を表すラドン散逸率であると考えられる.しかし,大気中ラドン濃度から散逸率を推定する方法は確立されていない.本研究では,大気熱力学に基づき,大気中ラドン濃度と気象要素(気温と熱フラックス)からラドン散逸率を推定する式を導出した.さらに,大気中ラドン濃度の特徴的な変動と大気構造の変化を関連づけることができた. 以上の研究成果は,地殻歪に対する大気中ラドン濃度の応答成分を抽出する際に定量的な制約を与えることができる点で重要である.
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