この研究は、モバイルアドホック・ネットワークのためのテストベッドおよび新たなプロトコルの実装を目的としたものである。平成21年度の研究実施状況として、屋内・屋外での実証実験をおこなうためのテストベッドを構築した。また、シミュレーションによる評価も行ないモバイルアドホック・ネットワークの経路制御プロトコルと様々な移動パターンモデルをテストベッドに実装し、その関係を明らかにした。 研究実施計画にあげていた課題は、ほぼ達成することができた。平成21年度では、複数の移動モデルをテストベッドに実装し、ヘテロジニアスな環境やネットワーク・トポロジに適応可能な経路管理機構に関する解析を行った。解析において、プロアクティブ型の経路制御プロトコルであるOLSRとB.A.T.M.A.N.、リアクティブ型の経路制御プロトコルであるAODVとDYMOの評価をシミュレーションまたは実証実験において評価した。その結果、屋内環境においてソースノードが移動するモデルと中継ノードが移動するモデルを比較すると、ソースノードが移動するほうが、ネットワークの性能(スループット、パケットの到着率)が高いことを明らかにした。この研究成果は他のP2Pを通信用いるネットワークの研究にも重要であり、その研究の方向性を示す一つの指針となるものである。 平成21年度の研究業績として、論文誌に3編(第一著者1編)の論文がある。その上、国際会議に5編(第一著者2編)と国内研究会に1編の論文が採録された。
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