研究課題
中央ユーラシアの初期騎馬遊牧民が、東西交渉において果たした役割について研究するため、青銅器を中心とした分析を行なっている。研究成果の説得力を高めていくためには、多様な資料を用いた分析の必要性を感じ、現在ではポールトップに限らず、鈴や鏡といった資料に関しても収集している。ポールトップには鈴を伴う例が多いが、鈴自体に注目してみると、紀元前2千年紀の中頃に中国北方と北西イランの2ヵ所で誕生し、拡散していった可能性が高い。鈴を製作するには高度な鋳造技術が必要とされ、鈴から青銅器とその製作技術の伝播関係を追うことができる。翻ってポールトップを観察すると、ユーラシアの東西両側から鈴が伝播してきたと言え、二つの資料の相関性が伺える。また鈴を伴う資料として、カラスク文化と商代・西周時代に見られる弓形器についても検討している。ポールトップが現れる紀元前1千年紀前半の中央ユーラシアには、東からは中国鏡、西からはイラン鏡が伝播してきており、多彩な資料が発見されている。紀年銘を持つ中国鏡は日本の研究者にも活発に議論される一方、中央ユーラシアでは鏡の型式分類や編年が確立されていない。当該地域から出土した青銅鏡の資料を収集するとともに、大学博物館所蔵のイラン鏡も整理している最中である。本年度は総じて、中国と西アジアから中央ユーラシアに流入した資料の収集に重点を置き、論文や資料の図版・写真を可能な限り集め、論文を書くにあたって最低限必要な情報を手に入れたと考えている。今後とも漏れがないかを調べていく必要はあるが、来年度はポールトップや鈴、鏡、弓形器に関する論文の執筆を中心に活動し、雑誌等に投稿していく予定である。
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早稲田大学大学院文学研究科紀要 第54輯
ページ: 125-128