研究概要 |
本年度は特に、WIMPによる反跳原子核の飛跡の高速読み出しのための研究、およびバックグラウンド(electron,γ線)の除去手法の開発に重点を置いた。 反跳原子核の飛跡は、原子核乾板中では数100nmしか走らないため、光学顕微鏡での観察は不可能であるが、暗黒物質のような相互作用の弱い反応の探索においては大質量の検出器が必要なため、光学顕微鏡での飛跡の読み出しが必要である。この解决手段として、NITを引き伸ばす技術開発を行い、飛跡が数μmとなり、光学顕微鏡での飛跡認識を可能にした。さらに、引き伸ばされた飛跡を自動飛跡読み取り装置による自動認識のR&Dを行った。NITを読み出すために、既存の読取装置を改良し、光学的なカットのみで認識効率が80%以上出せることを示した。 飛跡として認識されるものは、銀粒子が2つ以上近接したものである。この際光の共鳴波長が単独の銀粒子の場合に対しシフトすることがシミュレーションで示された。これにより、引き伸ばす前に散乱光のみで高速に飛跡候補を選びだすことができることが示された。次年度において実用化に向けた開発を行っていく。 バックグラウンドの除去に関して、NIT自身の感度調整を行うためにハロゲンアクセプター増感処理を開発し、感度の調整を可能にした。これによって電子のバックグラウンドを5桁以上除去することが可能であることを示した。また、速度の遅い反跳原子核とバックグラウンドでは現像の種になる潜像核の形成場所が異なることがわかってきており、バックグラウンドに対して感度が低いが、反跳原子核に対しては感度が高い現像が可能であるがわかった。これにより、大幅なバックグラウンドの除去が期待できる。
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