研究概要 |
本研究では、半乾燥地の耕作放棄地における土地荒廃問題について、放棄年代別の植物生態および土壌水分移動特性を把握し、放牧地生態系における耕作放棄後の回復プロセスを明らかにし、土地管理基準の確立へ寄与することを目的とした。以下にその成果をまとめる。 (1)半乾燥地の耕作放棄地における研究のレビューをおこない、耕作放棄地の回復過程を議論する上で重要な要素に関する知見をまとめ、特に重要な植生と土壌理化学性の知見に関する問題提起を行った。 (2)放牧地生態系における耕作放棄が植物群落、土壌環境に与える影響について、植物の種特性から把握することで、耕作放棄後の植生パターンと土壌特性について明らかにした。 (3)半乾燥地の植生にとって影響が特に大きいと考えられる、土壌水分移動特性が耕作放棄後どのように変化し、植物群落に影響を与えうるかを、数値シミュレーションから把握した (4)(2)結果から、植生回復過程において指標種と考えられる、多年生イネ科2種の耐乾・耐塩性を明らかにした。 (5)多年生イネ科草本の耕作放棄地への侵入が土壌環境に及ぼす影響および、多年生イネ科草本が土壌環境からうける影響について、(3)で求めた土壌水分移動特性および,(4)で求めた植物吸水特性を用いて、数値解析から明らかにした。 (6)放牧地生態系を前提として、耕作放棄後の回復プロセスの把握を試みることで、明らかとなった知見を主とめ、土地荒廃が深刻な地域で必要と考えられる土壌水分管理や年変動の大きい降水量を前提とした土地管理基準および積極的な修復活動が必要な耕作放棄地への修復技術の応用可能性について議論し、その内容を博士論文としてまとめた。
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