ヒストン点変異体株ライブラリーを用いた染色体分配における機能解析 ヒストン点変異株ライブラリー(histone-GLibrary)を用いて、微小管重合阻害剤であるthiabendazole(TBZ)とbenomylに感受性を示す24のヒストン点変異株を新たに同定した。H2A-I112A点変異株では、もう1つの微小管重合阻害剤であるnocodazole処理によるM期同調の解除後に、染色体分配異常を示す細胞の割合が増加した。姉妹セントロメアと微小管の経時的生細胞観察により、H2A-I112A点変異株では異常な動原体-微小管結合様式であるmono-polar attachmentを示す細胞の割合がnocodazole処理時間依存的に増加することが分かった。また、syntelic attachment(2つの姉妹動原体のどちらにも一方向からの微小管が結合するもの)を解消する働き(re-orientation)があるchromosomal passenger complex(CPC)及びSgo1のセントロメア領域における局在量は、H2A-I112A点変異株で低い状態にあった。さらに、Sgo1の過剰発現は、H2A-I112A点変異株を含む多くのヒストン点変異株が示すTBZ/benomyl感受性を回復させた。これらの結果から、コアヒストンH2Aはbi-orientationの正常な形成に必要であることが示唆された。ヒストン点変異と微小管重合阻害剤により誘導されたクロマチン構造の異常がCPC及びSgo1の局在を変化させ、CPC及びSgo1の機能を減弱させたと考えられる。 H2A-I112を含め、ヒストンのアミノ酸配列は酵母からヒトに至るまで極めて高度に保存されているため、本研究のさらなる解析は進化的に広く保存されたクロマチン制御機構の基盤解明に繋がると期待される。
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