1、両国における学校とNGOによる教育実践の先行研究を「多文化共生」の野を中心に分析し協働する上での課題を整理した。日本は筆者がコーディネーターとして関わっている京都市の事例、韓国は先進的なプログラムとして評価されている安山市の事例を取り上げて比較検討し、プログラムの内容や協働する上での課題を整理した。比較検討した内容については、博士論文に記載した。 2、中学校やNGOが協働した「多文化共生教育プログラム」を教員と協力して引き続き開発し、その成果を発しながら、韓国のNGOや教員に協働や交流の提案を行った。筆者がコーディネーターとして関わっている「多文化共生教育プログラム」を、2009年度は「日系移民」をテーマに授業を開発、実践し、その成果について5回の学会発表などを行った。新たに「KOREA子どもキャンペーン」の事業と連携し、北朝鮮や韓国の子どもたちにメッセージを送る実践を提案し、実施した。また、今後の交流について、韓国で多文化教育のコーディネーターとして活躍する人物と連絡をとり、今後も交流の具現化に向けて連絡をとっていくことを約束した。また、京都市外国籍市民懇話会で、「多文化共生教育を担うコーディネーター」の設置を提案し、市長への報告書にまとめられた。 3、NGOなどのトランスナショナルな主体と中学校が協働する「包括的平和教育プログラム」を「多文化共生」の視点から開発した。授業内容の学習段階、今後推進すべき学校とNGOの協働体制のモデル、具体的なプログラムを提示し、その内容を学会で発表しながら、博士論文としてまとめた。 以上のような研究成果は、多文化社会に対応するテーマとして発展してきた、多文化教育、異文化間教育、国際理解教育などを、包括的な平和教育の観点から捉えなおし、平和教育の新しい方向性を示すことができた点において、大変重要である。
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