研究概要 |
本研究の目的は,現代トルコにおけるタルト系アレヴィー集団の包括的な民族誌研究である。本研究では,トルコ系アレヴィー集団とのオジャック構造の比較から,アレヴィーという帰属概念の全体像を明らかにするであった。また,本研究においてはアレヴィーという帰属概念の成立には周辺のスンナ派社会とのせめぎあいが重要な役割果たすとして,両者の相互作用も念頭に置いたフィールド調査および文献研究を並行して行った。 本年度は7月11日より9月5日までの期間,特にムシュ県ヴァルト郡ババ・マンスール系のオジャック構造において重要視されている,預言者一族崇敬を,儀礼や象徴,そしてオジャックなどの社会範疇を明らかにすることと,アレヴィー社会と周辺の社会との相互関係の中に生じるアレヴィーとしての自己規定のあり方を明らかにすることが目的として,トルコ共和国においてフィールド調査を行った。そして,オジャックという帰属概念に関する包括的な研究成果として,スーフィー・聖者研究会2008年度合宿研究会において口頭発表を行った。その中で,先行研究ではあまり触れられてこなかった,オジャック構造に関して体系的に説明した。この口頭発表において,聖者・タリーカ研究の専門家からご指摘いただいた部分を検討し,日本オリエント学会刊『オリエント』誌に「タルト系アレヴィー集団における聖者崇敬-ババ・マンスール系のオジャク構造を関連付けて-」という題で論文を投稿し,現在査読中である。アレヴィーとスンナ派の相互作用に関しては,11月に上智大学で行われたシンポジウムおよびマレーシアで行われた国際会議において,スンナ派のジェマート運動とアレヴィー社会の相互作用を説明した。前者での口頭発表を基に,日本イスラム協会刊『イスラム世界』誌に論文の投稿を予定している。
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