本研究では、1)スピリチュアリティという宗教的実践の身体経験によって生じた人生に対する価値観の変容に着目し、スピリチュアリティのもつ癒しの機能について明らかにし、2)癒しの視点から、スピリチュアリティという実践を宗教と医療の両領域から総合的に考察することを目的としている。最終的には、心療内科系疾患の患者に対して、スピリチュアルな身体経験を通じた癒しの可能性を提唱することを目指している。本年度は以下のような活動を行った。 1、研究成果の発表 2006年度に実施した宗教的実践としてのスピリチュアリティに関する現地調査の結果を二本の論文にまとめた。また、『文化人類学事典』に英国の新しいスピリチュアリティ実践に関わる項目を執筆した。現在、2008年度に行った調査に基づき、英国のスピリチュアリティに関する二本の投稿論文の執筆を進めている。さらに、現代ヨーロッパにおけるスピリチュアリティの実践について、三つの学会で報告を行った。 2、英国グラストンベリーでのフィールドワーク ・2008年7月〜8月(科学研究費補助金使用):当地で開催された女神とスピリチュアリティの祭りと癒しのフェアにおいて、参加者に対してスピリチュアリティ体験のインタビューと参与観察を行った。 ・2009年1月〜5月:これまでに、補完代替療法とキリスト教教会のヒーリングの担い手と受け手に対して、インタビューを実施し、それぞれの実践の参与観察を行った。また、公的な英国の医療制度の仕組みと問題点についての情報収集も行った。現在、公的な医療制度の中でのスピリチュアリティの実践の調査を進めており、具体的には公的な医療従事者へのインタビューと、チャプレンなど病院における宗教的活動の実践に関して、観察を行う予定である。調査を行いたがら、データの整理と分析も同時に准めている。
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